07 左足に助けられて

左足に助けられて

私は、生まれて間もなく小児麻痺にかかり、左足は、細くて冷たく自由に動かない。それにひきかえ、右足は筋骨逞しく太く温かく、左足を無意識に護っている。左足を護っているのは右足だけではない。私の身体すべてが、不自由な足を護るようになっている。

私はものごころついた頃、いつも足を悔やんでいた。こんな足はないほうがましだと真剣に悩んだ。世の中には、いろいろな障害をもった人達が、あらゆる分野で活躍している。そのことを、マスコミや本で知った。直接お目にかかって話したこともある。こんなことを繰り返している中で私の心に気付きが芽生えた。私の身体的障害が少しずつなくなり、心構えに変化が表われた。いつの日にか、左足を大切にしている自分に気付く。役立たずの恥ずかしい足が実は、身体の中で最も一生懸命頑張っていることを、ことあるごとに自覚させられる。私はとんでもない、心得違いをしていた。左足に申し訳ない。私は足の障害より、心構えに障害があったのだ。私の生活も仕事も、事業に対する熱意も、私の細く冷たい左足が一生懸命支えている。このことに気付かなかった自分が恥ずかしい。

心に支配された人間社会にあって、すべての人に大切な役目がある。頭が良いとか悪いとか金があるとかないとか、背が低いとか高いとか、身体が丈夫かどうか、数え上げればキリがない。すべて人の心が決めること。優しい思いやりが境界も壁もなくしてくれる。