創業は易く守成は難し
十二年間勤務させていただいた眼鏡店を後ろ髪を引かれる思いで退社し、熊本県庁近くの事務所をお借りし独立開業、事業計画書は本を丸写しで数字だけ、何度も書き直し自己満足、今振り返れば、無駄なことでありました。無謀な挑戦でスタートしたものの、何ひとつ計画通りすすまず試行錯誤の連続、いきなり出鼻を砕かれた格好、しかし、未熟さ故に悲壮感はありません。僅かな商品でお客様のご満足を得られる筈もなく、親戚や同級生、その他のご縁を頼りにメガネを買っていただく強引さ、三十歳の横着盛り、世間知らずの無鉄砲、さぞや周囲の方々にご迷惑をおかけしたことだろう。
妻は勿論、弟夫婦も巻き込み、崖っ淵に立って、自らを奮い立たせ、昼夜を問わず寝食も忘れ、働き続けることで、不安から逃れていたのか、経営の知識もなく、売る商品も乏しく、金を借りる力もないのに、只ひたすら店の繁栄を信じ、周囲に夢を語り同意を求めた、あの日あの時。独自の販売戦略を信じ、一途に貫き通したメガネを売ることへの執念、何が何でも、やりぬく実行力、正しいメガネ追求への自信、お客様を一喜一憂しながら待つ時の不安と期待が交錯する心境、外商活動で足が棒になり、クタクタ、でも売り上げが0で店に帰るのをためらったこともあった。月末の手形をおとせずに思い悩んでいた最中、思わぬ売り上げができて涙が溢れ、体の震えが止まらなかったこともあった。独創的発想でなりふり構わず突き進む行動力、どんな障害難局をも切り開く逞しい挑戦意欲、創業時の躍動感を呼び起こすエネルギーが今の私には残っていない。であればどうすればいいのか。
創業は易く守勢は難し
平成23年11月17日