第十二話 差別化の新商品 大ヒット
県庁通りのヨネザワ旧本店。当初は中央の立て看板より右側のビルのみ。後に左側を建て増した=1979年
「ヨネザワ」の成長の要因はレンズはHOYAバリラックス、フレームはHOYAナイロールに的を絞り、戦略的に宣伝を集中したことです。
資金力のない小さな店が既存の店と競争するため、強者の弱点を攻める「一点集中重点主義」の弱者の戦略をとりました。
メガネ店は通常の小売店とは違って、店頭に陳列されているフレームは材料であり、レンズと組み合わせて商品になるのです。
フレームは顔にピッタリ合うのか、専門家のアドバイスが必要です。レンズはなおさら度が合っていなければ大切な眼を悪くします。小売店の中でも専門性が強く、保守的で閉鎖的な業界でした。その古い体質に強引に風穴を開けたのがHOYAであり、HOYAの戦略を上手く利用するのが私の役目だと認識していました。
HOYAは小売店との直接取引きが基本です。お客さまの的確な情報をメーカーに伝えることができます。
HOYAはレンズやフレームに新製品が多く、レンズを機能的にとらえ、無色レンズに加えカラーレンズ、単焦点レンズから多焦点と、付加価値を追求した新製品を数多く発売していました。
フレームも同様です。それまでセルロイドが主流でしたが、その欠点をカバーする軽さとかけ心地、ファッション性などを取り入れた新製品を売り出していました。
その中で注目したのが、境目のない遠近両用のバリラックスレンズとナイロールフレームでした。ナイロールフレームは枠なし部分をナイロン糸で固定し、レンズが割れやすい枠なしメガネの弱点を補強しました。
この2つの新商品を看板商品にすると決め、集中的に販売しました。競合店がHOYA製品を扱わないため、独占販売のごとく重点的にPRしました。
また新商品は、大変デリケートで社員教育が欠かせず、特に検眼・加工・フィッティングに高い技術が必要でした。それでも競合他社との差別化商品としては最適でした。
狙いが当たりました。境目のない遠近両用レンズや軽いナイロールフレームはお客さまに広く受け入れられ、創業間もない小さな店をけん引してくれました。