第十八話 「救ってくれた南こうせつさん」
大分に出店したのは昭和58(1983)年のスーパー旧寿屋の中津店が最初でした。その後も10店舗出しましたが、苦戦の連続でした。
HOYAレンズを主力に販売していましたが、大分でのHOYAのシェアは全国でも特に低水準でした。他県では売れていた境目のない遠近両用レンズなどが知られていないのです。HOYAは卸問屋など経由せず直接取引きが基本方針。業界に挑戦するような営業は老舗の多い大分では抵抗があったようです。
大分市から遠い小さな町では小さく、狭く、濃く、深くのやり方が浸透し、竹田店では好成績を挙げることができました。
しかし、県全体では営業活動が成果に結びつかず、得意分野である農協を経由した組合員の方への販売もなかなか了解がいただけませんでした。農協以外の団体や組織への営業活動にも制約が多く、ショッピングセンターなどへの出店もできませんでした。
それを救ってくれたのが、フォークシンガーの南こうせつさんでした。大分市出身でソフトなイメージの彼をイメージキャラクターに採用したことが功を奏し、徐々に業績も上向きました。
平成9(1997)年から「南こうせつ アスペクタ音楽祭」を阿蘇の旧久木野村で催し、お客さまを中心に毎回1万人以上が九州各県から集まりました。
チケット販売もしましたが、メガネなど1万円以上をお買い求めいただいたお客さまを招待しました。特に大分からはバスを何台も貸し切って会場まで送迎しました。
熊本県野外劇場アスペクタは南外輪山の裾野にあり、煙たなびく阿蘇五岳を背景にした野外コンサート会場です。
広大なスケールの草原に南こうせつさんのやさしい歌声が響き、会場も一緒に歌います。青葉は輝き、草木は風に揺られてリズムをとっているかのよう。雄大な自然との一体感を楽しむことができました。
音楽祭は10年間続けました。南こうせつさんの「一区切り付けましょう」という意向もあり、取りやめましたが、毎年、無事開催できたことがうれしくて仕方ありませんでした。お客さまはもとより、関係者の方々に心より厚くお礼を申し上げます。