第二十六話 福岡出店で全敗 原点へ
スーパー旧寿屋の経営破綻で各地の寿屋店にテナントとして出店していた20店舗も閉店に追い込まれました。
その売り上げ分を穴埋めしなければと焦り、九州最大の市場、福岡県内への出店戦略を立てました。
関係取引先に相談したら、「お宅の実力ならば成功間違いなし」。コンサルタント会社はマーケティング調査の結果、最高点をつけてくれ、反対する人は社内外、誰もいませんでした。
各取引銀行も「シンジケートローン(協調融資)はこんな非常時のためにある、寿屋倒産の逆風をチャンスととらえて出店しましよう」と口をそろえて言ってきました。
寿屋倒産で売り上げが10億円ダウンすると想定し、その分を福岡に10店舗をつくって、売り上げ10億円の目標を立てました。
資金のめどがつき、立派な店ができ、人材も採用でき、宣伝によってお客さまを集める。話がトントン拍子に進みました。
ところが、フタをあけてびっくり。平成14(2002)年から2年の短期間で一気に北九州市黒崎や福岡市近郊に出した10店全店が失敗。さらに財務内容は悪くなり途方にくれました。
泥縄式にオープン後、戸別訪問やマスコミを使って宣伝費をつぎ込みましたが、効果はなく赤字は膨らむばかりでした。
万策尽き、開店2年目でしたが、順次閉店することに決めました。しかし、違約金など契約書の条件があり簡単ではありませんでした。
福岡出店の失敗は、よい教訓になり、反省することだらけでした。
創業の原点に返ろう。創業時は金はないけど人材はいました。その人の周囲にお客さまがいました。そのお客さまのために店をつくりました。お客様が満足料としてお金を払ってくれました。
人づくり↓お客さまづくり↓店づくり↓金づくりの順番で展開してきたのに、福岡では全くその逆をやっていたのです。
大型店のテナントでの楽な売り上げづくりに慣れて、自分たちでお客さまをつくり、ご来店いただく基本を忘れかけていたのです。
それ以来、社員の皆さんに私は田舎者、田舎商売が原点。原点に返ろうと呼びかけることにしました。