第二十七話 小さな町に大きな店を
「小さな町に大きな店を」の方針で建てられた長崎東諫早店
スーパー旧寿屋の経営破綻で入居していた全テナント20店舗の売り上げ減と、福岡出店10店舗の失敗が重なり、いよいよ窮地に陥りました。銀行には冷たくされ、取引先も条件を締めつけてきました。
晴れた日に傘を貸し雨の日には傘を取り上げる。銀行も取引先も仕打ちは同じです。
だが、負けるわけにはいきません。出店戦略の失敗は出店戦略でとり返す。原点に戻り人材教育に再び力を入れました。
戸別訪問、外商活動によるお客さまづくり。お客さまが2千人できたら、そのお客さまにとって最も便利な立地に店をつくる。お客さまが満足料としてお金を払っていただく。小さく、狭く、濃く、深く市場を分析しました。
小さな町に大きな店をつくろう。平成14(2002)年以降、町の人に自慢していただくように、都会の店よりすべてにおいて優れた店を福岡市のような都会ではない地方の町につくりました。
都会は交通の便もよく、店もたくさんあり、メガネを買うのに便利な環境にあります。地方では交通の便も悪く、大きな眼鏡店も少なく、より良いメガネをより安く買える店が少なく不便です。
その不便を解消するのが私たちの役目です。売り上げ拡大のために欲が突っ張って、大きな市場を狙ったのが誤りでした。
寿屋のテナントでお得意さまが増えたと思っていたら、それは寿屋のお客さまであって、わたしどもの固定客ではなかったのです。
寿屋の経営破綻という、まさかの衝撃に冷静さを失い、福岡に大きな店をつくって、一挙に挽回[ばんかい]しようとつい思いました。己の未熟さを反省しました。
立派な事業計画書を作り、関係者がもろ手を挙げて推進した福岡出店戦略は絵に描いた餅になりました。わが社の一大事を取引関係にあるというだけで真剣勝負で考えてくれるはずがありません。真剣勝負は社長自身、自らやるべきであると肝に銘じました。
この2大事件は創業以来順調に成長して、大きな失敗を経験したことのない私にとって、大きな収穫であると考えることにしました。