第二十八話 「みると、きくは、こころとつながっている」
私たちは、五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)を通じて心が動き、心して行動する。そして、いつの間にか心を忘れ、感動がなくなり感謝する機会を失う。先日、娘家族と孫の子守にかこつけて、沖縄にスキューバーダイビングを楽しんだ。海の景色は限りなく美しく、魚たちと一緒に戯れる。海中では、五感をはたらかせて、自然の恵みを受け入れる。魚たちの声は聞こえないが、観ることによって、目と目が合図し合い魚たちとの会話を楽しむことができる。海の世界との一体感を味わいながら、酸素に支配された決められた時間であっという間に時は過ぎる。空気を求めて海面に顔を出す。海面は、水と空気の境界の一線で、私を現実に引き戻す。「見る」とは、目の働きで物の存在、形などを知る理性情報と、目以外の感覚を含めて物事をとらえる感性情報とがある。まさに「観る」、「看る」、「診る」である。「聞く」とは、音や話しを耳に感じて理解することと、耳以外の感覚でも感じ取り相手の気持ちを聞き取る。即ち、「聞く」は自然に聞こえてくること。「聴く」は自分から注意して聴くこと。「訊く」は問いただすこと。このようにして、五感はすべてに関連付けられ、お互いを補完し合い、人は心を動かす。人は感動の時を繰り返すうちに、当たり前になり惰性に流され、心を失うことがある。スキューバダイビングの醍醐味も、毎日続けているとその美しさに見慣れ、感激はなくなるのであろうか。そうであるならば、年に一度の家族旅行でのスキューバーダイビングのチャンスに感謝しなければならない。日常の生活に戻れば、楽することに慣れ贅沢は当り前、満足感の少ないライフスタイルに感謝の気持ちが薄れているのか、五感が鈍っている自分にふと気付くと、日々の暮らしは高くなり、思いは低くなっている自分の姿が見える。「暮らしは低く、思いは高く」イギリスの詩人、ワーズ・ワースの言葉が心に響く。心に繋がる“視ると聴く”を生涯の仕事として、毎日楽しく働かせていただけることに感謝いたします。