第三十一話 「逃げられない連帯保証人」

第三十一話 逃げられない連帯保証人

平成14(2002)年2月初旬、熊本市の社会福祉法人仁愛園の施設見学に誘われました。私自身も身体障がい者。障がい者の方々のお手伝いをしたいと思っていた矢先で、運営協力の依頼でした。
 熊本市の幹部5人が来社されました。それまで市にお願いしたことはあっても市からお願いされたことはありません。元理事長が業務上横領容疑で逮捕されたことは聞いてはいましたが、私も天狗[てんぐ]になり弟と相談の上、協力しましょうと返事しました。
 2月22日、仁愛園に融資していた金融機関の応接室に案内されました。金銭消費貸借証書が示され、「理事、関係者ら10人が連帯保証人になっている。あなたは代表理事として債務者になってくれ。保証人はみんな資産家ばかり。心配はいりません」と説明され、判を押しました。

ところが、借入金は当初聞いていた額の3倍にも膨らんでいました。次から次に金の工面の相談。相談に乗らないと1億5千万円の返済が遅れ、わが社の信用にかかわります。
 やむを得ず、会社から借金して金をつぎ込む羽目に陥りました。10人の保証人の方々も自分のことで精いっぱい。仁愛園の債務や不祥事を解決に導くには真剣に取り組むしかありませんでした。
 まず、人を送りこんで実態をつかむことにしました。早稲田大学を卒業後、HOYAに勤務していた姉の長男柴田賢示を事務長として再建に当たらせました。
 実態は社会福祉法人と株式会社が混同され、資金の流れが不明瞭でした。元理事長の保証を社長がして、社長の保証を理事長がしており、これが一番厄介でした。
 熊本市に行っても、幹部が入れ替わり、相談の窓口はどこにもありませんでした。
 借入金を社会福祉法人と株式会社に完全に分けることから着手しました。県、市、市議、弁護士、税理士ら多くの方のご指導をいただき正常化に向かいました。その後、保育園だけ残し、その他施設は済生会熊本病院を運営する社会福祉法人に引き継いでもらいました。
 仁愛園の件は己の世間知らずを自覚させられました。今も会社に当時の借金を返し続けています。1億5千万円の借用証は自戒のため手元に置いています。