第三十五話 不登校の生徒 変わり成長
水前寺高等学園の始業式で生徒を励ます米澤房朝学園長(中央奥)=2012年1月
5年前、熊本市の水前寺高等学園の通信制高校連携科に一人の女子生徒が入学して来ました。不登校だった中学時と同様に、なかなか登校できませんでした。
親御さんは授業参観、保護者会、研修会、文化祭と積極的に学校行事に参加されました。
親の思いが通じたのでしょうか。それとも環境に適応したのでしょうか。2年に進級すると、徐々に笑顔で登校するようになり、アルバイトも体験、考え方も少し大人になりました。
3年生の三者面談では、短大受験を希望しました。しかし、第1志望の食物栄養学科は偏差値的に難しく、実習も伴うので、体力不足の彼女が卒業まで頑張れるのか。親御さんも私たちも心配でした。
別の学部を勧めても「ハードルが高いことは分かっていますが、挑戦します」。毎日登校し、小論文や面接の受験勉強に頑張りました。見事に予想を裏切り、うれしい合格です。
ただ今度は、学園時のように毎日短大に行けるのかが心配になってきました。親御さんが近況報告に来てくださいました。「入学式が終わりました」「友達ができました」「1日も休まず楽しく登校しています」「実習に元気で頑張っています」
それから2年。「娘がさらに上を目指し、大学編入試験を受験したいと言っています。合格は無理でしょうが受けさせてみます」
やがてご夫婦そろっての笑顔の合格報告。難関突破に「おかげさまで、本当にありがとうございます。感謝しています」と何度も何度も頭を下げられました。
私たちこそ「成長の過程を見せていただき、本人や親御さんの思いを共有させていただき、ありがとうございます」という気持ちでした。
卒業生たちは、不登校があったことなど想像できないほど変わり、成長しました。私たちの学園が少しでもお役に立つことができたのだとしたら、本当にうれしいかぎりです。
今年も1年前の卒業生が2人、4年前の卒業生が1人、卒業後の時を経て、専門学校を受験したいと相談、受験勉強に来ています。こんなふうに生徒たちから元気をもらっているのです。