第五十一話 創業は易く守成は難し
ヨネザワ本社の社長室の前に掲げられている「創業は易く守成は難し」の掛け軸
創業者は往々にしてわがまま、我田引水な面が際立つと思われます。
テレビでカリスマと評判の経営者が横柄な態度で意見を述べていました。とんでもない奴だと思いながらも、最後まで話しを聞くと、一部納得するところもありました。
人の意見に左右されて、自分の考え方を簡単に変えるようでは、起業しても長く続かないのも事実です。周囲の人と同じ発想で業を起こしても、人はついてこないし、同志の協力も得られません。ありふれていては人は振り向いてくれません。
人がアッと驚くような、人が無理と思うようなことを時間をかけてやり続け、目標達成までやり遂げようとする意欲が大切だと思います。
失敗に失敗を重ねても、それでも諦めず反復するには時間がかかります。新しい事業を始めるには将来の夢、ロマンがあり、その夢を実現するために長期計画を立てる。計画を遂行するために組織をつくり、組織に人を配置して人が行動をおこす。創業は夢を追いかけるための最初の一歩なのです。
創業して10年後にいくつの事業が残っているでしょうか。1割残ればいいほうではないでしょうか。わが社が今後も成長するためには、後継を託す会社の皆さまの覚悟を確認しなければなりません。
創業時、崖っぷちに立って旗をふり、俺についてこいと独断と偏見でなりふり構わず突き進む行動力、どんな障害難局をも切り開くたくましい挑戦意欲、創業時の躍動感を人に感じさせるエネルギーは今の私には残っていません。
年を重ねるとはこうゆうことなのか。体力も気力も同年代に負けるとは思いませんが、若さには勝てません。私には豊富な経験があります。その経験を若い後輩たちにつなぎ、さらに磨きをかけて明日につなげてもらいたい。
「創業は易く守成は難し」。創業の困難は過去のことですが、守成の困難は現実のこと。創業のときは、人数も少なく全員に当事者意識があってリスクを負う自覚があります。
しかし、時がたつにつれ、創業時の苦労は忘れがちになります。それどころか、そのすきをつかれて競合に負けてしまう恐れさえあります。攻撃は最大の防御なのです。
働くことは夢を育んでくれます。もっと働きたいと小さな店を持つ。小さな店に共感する人たちが集まる。小さな店が大きな夢に向かって小さな一歩を踏み出す。共感する人たちも一緒に歩み連なります。小さな一歩一歩を繰り返しているうちに、夢は必ず実現するのです。